夜のアクマ

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青い花

ノヴァーリスによる未完の小説。原題はHeinrich von Ofterdingenで、主人公の名前。

20歳の青年ハインリヒが、母親と一緒に実家まで旅をする。旅の途中で、商人や騎士や隠者から話を聞いて、詩人として覚醒していくという感じの話。かつての詩人はすごい力を持っていたとやらで、海賊に襲われた詩人が歌うとイルカが助けてくれたとか、美しい王女とこっそり子供を作った男が、詩を読むと王城で大歓迎されたとか。そういう伝説的な物語もある一方、詩人は感情をそのままぶつけてはいけないなどという実践的な話もある。十字軍に参加した騎士の英雄譚に心惹かれる一方で、十字軍によって戦利品として連れて来られた東洋の女性の話を聞いて同情的になったりというくだりは、小説が書かれた1800年頃の十字軍観を見るようで興味深かった。

第1部の8章までで、ハインリヒは、詩人クリングゾールの娘のマティルデと惹かれ合い、あっさり結婚する。邦題の「青い花」は、ハインリヒが夢の中で見た花だが、あれはマティルデのことだったんだ。みたいな運命的なものだったのかもしれないが、最初にマティルデと会った時は、父親のクリングゾールにばかり気になって、マティルデのことは眼中になかったという。

それで第1部の最後、9章ではクリングゾールのメールヒェンが語られる。これがなんというか荒唐無稽で、註釈を読むと、いろいろ深い意味があるようだが、はっきり言って面白くない。

第2部では、ハインリヒが巡礼者となって、父親について語ったりする。といったところで、完結せずに終わり。